27人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ベースに八つ当たりはマズイよな」
大好きな大好きなベース。
さっき、怒りで一瞬だけベースを壊したい衝動に駆られた。
可愛さ余って憎さ百倍ってヤツだな。
好きなベース
出来ないから一瞬だけ嫌いになるベース
愛情と憎しみは紙一重というヤツか。人間は忙しいな。
少年は、しばらく休んでまたベースを手に取った。
「おい!…またお前か。熱心だな」
「わりぃ」
舞台の袖から茶髪の少年が出てきた。
ベースを椅子に置いてすまなそうに立った。
関係者か?
心を覗く。
茶髪の少年は同じバンドのメンバーで、友達で、ドラムをやっている。
仲間か。
「次の曲の作詞 出来たか?」
「まあまあだ」
少年は一秒でも惜しむようにまたベースを弾き始めた。
「…なあ。お前さあ、すげーベースと相性 わりぃのに、好きだから練習してるのな」
少年の動きが止める。
「お、おう」
軽い苛立ちを噛み潰した。
キレるか?核心 突かれたらようなもんだしな。
「諦めないでスゲーって思う。いつも練習してるし、作詞もだらけてねぇ。
だから
いつかお前とライヴ出来るの信じてる」
少年は目を見開いて止まる。
最初のコメントを投稿しよう!