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「ああ、練習場はここか。」
竹林に囲まれた長方形のスペースがあり、そこに数この的が立てられている。
ここは本来花壇かなにかにするつもりだったのだろうか、所々にそれとおぼしい掘り返した後が見られる。
しかしそれさえ踏み固められ、豊富な水を蓄え綺麗な花を咲かすはずだった地面は今やその片鱗すらみせず乾いた土地へとなしていた。
「すまない。」
栞は一言その土地に囁くように理を入れ一歩踏み入った。
あとは的に吸い寄せられるようにポジションにつき、構えた。
この栞という少女はこんなどうでもいいような地面にすら愛情の念を抱く、そんな優しい子なのだ。
しかしその優しさはときに躊躇いを生む。
(しまった!)
そう思った時にはもう矢は指から離れ的の遥か上方へと飛んでいった。
「まったく、こんなことでは他の選手には到底適わないな。」
とすこしブルーな気持ちを心中で呟き次の矢を弓へつがえ的へと集中する。
そうなのだ、今ですら見つめた標的がぼろぼろでえぐれ、欠け、穴があいている。
ただそれだけのためにこの的の運命に悲しみ矢を打ち違えてしまっているのだ。
が、しかし・・・
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