赤子

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シュタッ!!シュタッ!! 深夜一時、ひとりの老人が赤子を抱えたまま屋根から屋根へと飛び移り、移動していた。 そして老人の後ろを刀を持った20代の大男が老人を真似るように屋根から屋根へと飛び移り、老人のあとを追いかけている。 しかし、老人と大男との差は開く一方。 これは老人が速すぎるが為である。 赤子を持ち、老化した体で20代に負けない俊敏力。 その老人はまるで忍者のようであった。 そしてその老人を追いかける大男は刀を持ち、闇の中でもわかるほど紅い瞳をもっていた。 死に物狂いで老人を追う大男の姿。 それはまさしく鬼に近い存在に見えた。 「まて泥棒!!俺の息子を返しやがれ!!」 大男が老人に叫ぶ。 「…………返して欲しくば儂を捕らえるのじゃな……」 そんな大男に老人は静かに言い放ち、更に移動速度を上げた。 大男にはいまの速度が限界。 だから老人の姿は大男の視界からどんどん遠くなっていった。 大男と老人の差はざっと見100m。 これではもう追いつける筈がない。 「く、糞がぁ!!まちやがれ!!綾(リョウ)を返しやがれぇぇええ!!!!」 大男の声が住宅街に響く。 「……許せ。」 老人は大男に聞こえぬよう静かに言い、大男の視界から消え失せた。
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