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「いまはいいけどね。学生という蓑があるからさ。なにもできないただの生徒で許される。だけど、卒業してそれから君は冬耶のそばにいてなにができる?」
「…私が…先生に…。」
「冬耶の手助けができる?支えになれるのか?」
侮蔑の目がチラリと美里を見る。
「できるわけがない。君にできるのはせいぜい足手まといになることぐらいだろう?」
「でも、それなら…いまから勉強します…先生の支えになれるように。そうなりたいから。」
要の表情がフッと緩む。
笑顔の仮面がまた徐々に要に張り付いていくのをただ美里は唇をかんで見ているしかない。
「君がいまから勉強して、役にたつようになるのは何年後だい?冬耶はいまいくつだ?待てるわけがない。しかも冬耶は君になにも話せないじゃないか。自分の過去も未来も。君はせいぜい愛人にしかなれないよ。どこまでいってもね…なら、いま身を引いたら?どうせ泣くだけだから。」
「…嫌です。」
軽く笑って要は思い通りの答えにうなずいてみせた。
「そう言うだろうと思った。」
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