ふたりで

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まだ若い、経験が足りないと一族で発言権も認められないでいて、歯がゆい思いをしてきた彼らにとってこの言葉は魅力があった。 そして、何より司が初めて『司』の当主として自ら動こうとしているのは、彼ら全員がずっと切望して待ち望んでいたこと。 「…できるな?」 返事のかわりにナギが立ち上がった。 それに続くように他の者も立ち上がり、すべきことをするために部屋を出ていく。 躊躇しつつも、ゆうもチラリと司を見て外に出た。 残ったのは、美里と司と要だ。 要はみんなが出払ったのを待ってから、揶揄するような笑みを見せて大げさに天井を仰いだ。 「やれやれ、口がうまいご主人様だな。みんないいように言いくるめて。」 はあ、とわざとらしい嘆息までつけて、肩をあげる。 そんな要に、司は冷静なまま薄く笑ってみせた。 「…だから、なんだ?」 「冬耶は全て計算づくだから、たちが悪いってことさ。仕方ねぇな。」 柄になく乱暴に言って、要もようやく立ち上がった。
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