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「あんた!ボケッとしてないで働きなよ」
奥からママが顔を出した
「ごめんねぇこの子いつもはちゃんと働く子だからまた会いに来てやって」
言いながらグラスを回収する
「そろそろ行くわ」
勝義は財布から一万円札を出すと「キープね」と言い立ち上がり
「オヤジ!帰るぞ」
土屋さんを支え入り口に向かう
私は急いで駆け寄り扉を開ける
「ありがとうございました」
ちょっと気まずい空気…
勝義は私に目を遣り
「今度子供の話聞きにくるわ」
と言って通りに出た
遠ざかっていく背中に
「私…旦那はいないの。家を出てきたの」
客に自分のプライベートを話すのは初めてだったがさっき言った事を訂正してほしかったのだ
勝義は振り返り
「悪かった。また来る」
言ってインパラに土屋さんを乗せドアを閉める
「あの…今日はサービスできなくてごめん」
謝ると
「俺は今日のアンタしか見てないからな~」
その時初めて笑った
ちょっと笑った顔が幼くて今でもよく覚えている
「じゃあな」
インパラは走り去った
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