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店を出ると真冬の冷たい雨が降っていた スーツの胸ははだけ スカートは敗れ 体のあちこちが痛む 私はコートを一枚羽織っただけで 「今日ぐらいタクシー使いなよ」 ママの声を無視していつも通り歩きはじめた …喧嘩してる場合じゃないよな… 早く借金返済して子供達に自転車買ってやるんだ レストランに連れて行ってハンバーグ食べさせてやるんだ 死ぬ覚悟で地獄から抜け出したんだ でも… ずっと外れ者だと言われてきた記憶が蘇る …女らしくしなさい …口答えするんじゃない …変わり者 なんで…自分が自分でいる事がいけないのか… いろんな思いが交錯して雨の冷たさは感じなかった
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