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「タンポポの花言葉……愛の信託・神のお告げ・恋愛の成就」
「……椎名、何やっとん?」
翌日の昼休み。
俺は教室で花の図鑑を眺めていた。
「いや、ちょっと調べものを……」
「ふぅん、意外」
目の前の席に中学からの友人、神谷がいた。
俺は神谷のことは気にせず、図鑑に視線を戻す。
「ん?」
よく見ると、まだ他にも花言葉が書いてあった。
「……思わせぶり・別離」
……えらく暗い雰囲気の花言葉だな。
「あ、佐川先輩や」
突然、神谷が窓の外を指差して言う。
「え?神谷って佐川先輩のこと知ってんの?」
「うん。だって佐川先輩有名やで?小さくて可愛いしモテる。」
確かに。
あの可愛さは犯罪級。
「ほら、今も女の子に囲まれとぉし。」
俺は神谷の言葉に窓の外を覗いた。
「……本当だ。」
女の子と一緒にいる佐川先輩。
……あの中に、佐川先輩が好きな人がいたりして。
胸がズキズキする。
「女の子に生まれたかったな……」
ふと口にした言葉に自分でも驚いて。
俺は慌てて図鑑に視線を戻した。
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