ダンデライオン

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  「あ、タンポポ」 園芸部に行く途中。 校舎の影にタンポポが咲いているのを見つけた。 「お前、ほんと何処にでも咲いてるなぁ。」 なんだか、タンポポの花を見る度に佐川先輩を思い出す。 「だってなんだか似てる……」 可愛らしくてふんわりしててさ。 「好きっ……だなぁ」 タンポポの花が一番好き。 「俺もタンポポ大好き」 背後から優しい声。 俺はゆっくりと振り返った。 「可愛いよね、タンポポ」 にっこり微笑む佐川先輩。 「なんかさ、タンポポって涼平君にすごく似てる」 「え?」 俺は自分の耳を疑った。 「可愛いくて元気いっぱいでさ……そっくり」 「……俺、そんなんじゃないです」 すると先輩は困ったように笑った。 「そんなことないよ。俺タンポポ見たら涼平君思い出すし」 頬が上気する。 一言一句が嬉しい。 「好きだなぁ、タンポポも涼平君も」 幸せすぎる言葉。 けれど、同時に悲しい。 「先輩……そんなこと、言わないでくださいよ」 「え?」 だって、期待してしまう。    
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