ダンデライオン

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  「はぁ……」 あれから、三日。 一度も園芸部に顔を出していない。 佐川先輩にすら会ってない。 「……会ったら泣きそう」 先輩のこと、困らせちゃったな。 「帰ろう……」 けれど、足が進まない。 少しくらいならいいかな? 俺は小走りで茂みの奥へと進んで行った。 「…綺麗」 相変わらず、鮮やかな景色。 今日も広場は花で彩られていた。 「……先輩は凄いな」 こんなに感動出来る世界を作ってしまうなんて。 「あ、タンポポ……」 俺は広場の奥のタンポポ畑へと足を踏み入れた。 また、先輩が眠ってるんじゃないかな? なんて淡い期待を抱きながら。 「……そんな訳無いか」 愛くるしい。 「涼平君?」 聞き覚えのある声。 俺はゆっくりと振り返った。 「……佐川先輩?」 鼓動が聞こえる。 気が付けば佐川先輩が俺に抱き付いていた。 いきなりのことでそのままタンポポ畑へと倒れ込む。 「うわっ!佐川先輩?」 うっすら目を開けると、辺りにはタンポポの綿毛が舞っていて。 目の前には佐川先輩の顔。 「涼平君……」 そっと名前を呼ばれて。 その唇が。 俺の唇に触れた。    
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