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夜、舗装もされてないない凸凹道を一台のトラックが進んでいく。
そのヘッドライトが照らしだすのは田んぼばかりで、他には何も見当たらない。
トラックに乗っている一人の青年。
歳は二十代前半といったところだろうか。
青い作業着を着ている彼の名前は李。一人の運び屋である。
今日も頼まれたものを届けるために、こうしてトラックを走らせていた。
空だと思われた助手席に置かれていたのは小さな箱。
どうやら今日の依頼はこの箱を届けることらしい。
「あーあ、こう何にもない道だと退屈でしょうがねぇな……」
李はあくびを一つ。
そしてハンドルから手を離し、ポケットから煙草とライターを取り出した。
煙草をくわえ、火をつける李。
煙草は先を紅く染め、喫煙者に毒を送る準備を整えた。
李は大きく深呼吸するように煙草の煙を味わう。
「ふぅー……」
車の窓からはきだされた煙は、一筋の線となり、清んだ空気に溶けていった。
いつもと変わらない李の日常。
今日も何事もなく仕事は終わるのだろうと、李も、道端に根付いた雑草たちすらもそう思っていた。
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