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女性の美しさに李は息をのんだ。
あまりに整った顔立ちは、まるでこの世のものでないかのよう。
いや、容姿ではない。この女性の纏う雰囲気そのものがこの世のものではないのだ。
「こんな夜中にどうしたんだ?」
李は女性に問う。
どうやらさっきまでの怒りは、女性の美しさで消えてしまったらしい。
「あなたは……運び屋ですよね?」
美しい、しかしどこか妖艶な女性の声。
「あぁ、俺は確かに運び屋だが……それがどうした?」
「あなたに……運んでほしいものがあります」
急な依頼。
さすがの李も、この不自然な事態に疑問を感じ始めていた。
「そんな急な依頼、受けるわけにはいかないな。ちゃんとギルドを通してからにしてくれ」
李は逃げるようにこの場を立ち去ろうとした。
事実、李は逃げたかったのだ。この場の異様な空気から。
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