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「お願いです!!話だけでも聞いてください!」
急に声を荒げた女性を憐れに思ったのか、トラックのドアを開けようとした手を戻す。
「……話を聞くだけだぞ?」
「あ、ありがとうございます!」
女性の顔には、この場にそぐわないほどの笑顔が宿った。
「単刀直入に言います。この先の街の女の子に、あるものを届けていただきたいのです」
「この先の街だって?ならすぐそこじゃないか」
街はもう視界に入っている。歩いてもニ十分かからないだろう。
「私はもう、ダメなんです……だからあなたにお願いしたい」
「事情は分からないが、あの街なら俺も用がある。ものと場所によってはついでに届けてやらないこともないが……」
李、実はかなりのお人好しである。
「ありがとうございます!」
女性はそう言うと、自らのポケットから一枚の写真を取り出す。
そこに写るのは中学生くらいの女の子。
「この子に、この子に幸せを届けてやってください」
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