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「あらぁ…遅かったじゃなぁい…」
無意識の海を抜けて、白荊と共に現実世界に浮かび上がれば、其処に居るのは私の七つ離れたお姉様。
「赤薔薇の姉妹に出会いました…」
月明かり差し込む病室の窓辺に、座る貴女。
ベッドに眠る、病に憑かれた少女を愛しそうな瞳で見ている。
「赤薔薇…真紅ねぇ…あの子もやっと、貴女の存在に気付いたみたいだわぁ…ねぇ、雪華綺晶…」
そっと窓辺から降り立った貴女の月光に照らされた銀髪は、纏わされた逆十字の黒いドレスによく映えて、まるでその与えられた"水銀燈"の名を体現している様に見える。
「お姉様…とても綺麗…」
無意識に出た言葉に、お姉様は妖艶に笑った。
「そうだわぁ…雪華綺晶、貴女も手伝ってちょうだぁい…。」
その言葉の意味。
お姉様は少女になる事を望んでいる。
それは、アリス・ゲームを告げる合図。
「もちろんです…お姉様…」
"Yes"と答えれば、自身が少女に成ることはない。
"No"と答えれば、私はきっとお姉様を壊さなければならなくなる。
薔薇乙女として、私を生み出してくれたお父様に会いたいと願うのは、云わば私の記憶に刻まれたメモリー。
消す事なんて出来なくて、お姉様を慕う傍らに私の薔薇乙女としての記憶がお姉様を壊せと言っている。
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