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走りづらい浴衣で必死にその場から離れた。
別に楽しみにしてたわけじゃなかった。
『なずなちゃんも一緒に行かへん?』
そう・・・誘われたから行っただけ。
『祭りの日、どっか行ってくれない?家にいられると邪魔なのよ。』
そう、出て行けって言われたから出て行っただけ。
ただ、それだけの事・・・
足取りがだんだん重くなる。
長い長い神社の石段をのぼり、境内に腰を下ろした。
別にいつもの事だ。
悲しむ意味もない。
気にすることない。
「よし、帰ろう!」
暗くなりそうな心をごまかすように声を張った。
重い腰をあげると、目の前が黒い影に阻まれる。
「一人?」
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