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(見たらわかるだろ)
それでなくても不機嫌なのだ。
心の叫びを押し殺し、目の前を取り囲むガラの悪い男達に冷酷な目を向ける。
「おぉ、こわっ」
わざとらしい声をあげる男に片眉がピクッと引きつった。
「どいてください。」
男の間を通り抜けようとすると、ガシッと腕をつかまれる。
「触らないで!」
取り乱すように思い切り手を振りほどき、震える腕を撫でるようにさすった。
「この・・・」
ドスの聞いた低い声が耳に届く。
(やば・・・)
「ごめんなさい!」
謝って許してもらえるはずもなく
「待て!」
と素早追われるが、待つはずもなく必死に逃げる。
浴衣の裾が引っ掛かり、うまく走れなかった。
「ぅおい!」
面白がるような男の声と同時にさっきの倍の力で、石段の手前で再び腕を掴まれる。
ただの汗か冷や汗かわからない汗が背中に流れ落ちるのを感じた。
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