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手が自由になり、ホッとして頬をゆるめる。
大きく息を吸い、そして吐いた。
無意識のうちに息を詰めていたようだった。
ほどけた紐は血で真っ赤に染まっていた。
でも手首の紐がほどけたからといってゆったりとはしていられない。
すぐに足首の紐をほどきにかかる。
固い。
痛みで手が震えて力が入らない。
やっぱりまた破片を使った。
今度は手が自由に動かせるので、さっきよりは断然効率よく紐を切ることが出来た。
思い切り伸びをする。
気持ちいい。
次にすることは既に考えていた。
ほどいた紐を拾う。
手首を縛っていた方は血だらけなので、足首に付いていた方。
多少は血が付いていたものの、両端を持ってみると肩幅位あって丁度いい長さだなと思った。
そして、ドアの横に立ち息をひそめた。
飯塚さん達は、何をやっているのかと訝しげに思う視線と紐が解け手足が自由になったことへの妬みの視線を私に投げかけてきた。
それを全部無視してドアの向こうに意識を集中する。
もちろん意地悪で彼女達の紐をほどかなかったんじゃない。
もし彼女達の紐をほどいて今から私がやることが失敗したら‥彼女達にも被害が及ぶ。
自分のせいで誰かが傷付くなんて真っ平ごめんだ。
偽善だと言われるかもしれない。
だけどそんなのは関係ない。
これは私のプライドの問題。
プライドが、自分のせいで誰かを傷付けることを‥許さない。
早く。
早く来い‥!
時間の感覚がわからないけれど紐を切る時間はそれほど短くなかったはず。
そろそろまた男がやって来るだろう。
私はそれを待っていた。
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