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──来た!
息を潜め30分経っただろうかという時に、微かに足音が聞こえてきた。
心臓が口から出そうなくらいバクバクと鳴っている。
目眩がする‥手が震える‥
でも、やらなきゃ。
このままは嫌だから。
バンッ
大きな音を立てて、ドアが開く。
男が入ってきた。
すらりとした後ろ姿で髪は黒く少し天パが入っている。
私はドアの影でそっと男の様子を窺う。
男が完全に部屋に入り、3歩進んだ、その瞬間─
「たぁーっ!」
私は、掛け声と共に男に後ろから駆け寄り飛びかかった。
両手にしっかり持った紐を男の頭上を通し首のところで思い切り引く。
背の高さの違いは大きかったがなんとか成功。
男は私の不意打ちの攻撃に、うあぁぁーっと情けない声を上げ仰向けに倒れる。
私は男が倒れた瞬間、男の腕を引っ張り回転させうつ伏せにさせた。
男の首を自分の片膝で固定し体重をかける。
持っていたガラスの破片を相手の顔の前にちらつかせ脅した。
無事人質を取ること、成功。
男は暴れるかと思ったけれど、不意打ちに驚いたのか破片に怯んだのか知らないが微かに唸り声を上げおとなしくしていた。
仲間は何人いるかわからないけど‥これで私達に手は出せないはず。
恐怖に震えながらも、泣きそうになりながらも、堪えてそう考えた。
男の悲鳴が聞こえたのか複数の走る足音が聞こえる。
1、2、3‥4人。
白人の男達がこの様子を見て目を見開き愕然とした表情をした。
自分の心音が‥聞こえる。
震えているせいで歯がカチカチ鳴った。
怖い‥こわい‥コワイ‥
なんで私が‥なんでこんなことに‥なんでなんでナンデ?
そんな思いに襲われた。
─こんなんじゃダメだ。
歯を食いしばって、逃げ出しそうな震える体を叱咤する。
私は…男達を睨み付けた。
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