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また、静寂が訪れた。
さっきの声にもしかしたら誰かがまた来るかもしれない、そんな恐怖に襲われて私はついとドアの方を振り返り息を詰めて耳を澄ます。
‥何も聞こえない。
近くには誰もいないのかもしれない。
決めた。
私は、自分1人だけでもどうにかこの状況を変えてみせる。
きっと、みんなで逃げ出すんだ。
「わかりました。でも私は1人でも行動します。もちろん、誰かに見つかっても'私だけ'が動いているんですからあなた達には被害は及ばないはずです。」
我ながら嫌な言い方だな、と思った。
いつも嫌われたくない、好かれていたい‥と悩んでいる私だけど、今はこう言う以外思い付かなかった。
飯塚さんと森さんはまだ不安げな顔をしていたけれど、私は行動し始めた。
まず、周りを見回した。
取り敢えず手足を自由にしたい。
紐は細めだけれど結構何十にも巻かれているし固く結ばれていてなかなかほどけそうにない。
一応結び目を歯でグイグイ引っ張ってみたけど、当然の如く無駄だった。
だから、壁際に放置されたダンボールまで這っていき角のところで紐を擦ってみた。
摩擦熱で熱くて痛かった。
ほどけない。
やっぱり無駄だった。
引っ張ると結び目がもっと固くなる気がしてなるべく引っ張らないように気を使った。
いろいろ見回してわかったが、この部屋は空のダンボールばかりでそれ以外は鍵のかかった棚しかなかった。
それは、ガラスの入った戸棚。
立たなかったから下の段しか開けようとしていない。
もしかしたら上の段は鍵がかかってないかもしれない。
行動するが吉。
まずその棚に寄りかかるようにして座って、その棚を支えに立った。
足が縛られているからきつかったし時間もかかったけど立ててよかった。
それからピョンピョン跳ねながら棚に向き合う。
あぁ、何も入ってないじゃん‥。
上の段はガラスだったから中が覗けたのですぐにわかった。
せっかく立てたのにとちょっと落ち込む。
そのとき、思い付いた。
紐を解く方法。
もうこれは最終手段かな。
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