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……カ、シャンッ
鋭い音が響く。
音を立てながら細かく砕けた者がパラパラと落ちた。
うーっ痛い。
手から赤い液体が溢れ手や袖を赤く染める。
棚のガラス部分を素手で割り、その破片で紐を切ろうと思った。
本当はダンボールを使って割ろうとしたけれど大きいものしかなくて、手足が上手く動かない状態の今は無理だと判断。
いつさっきの男が戻ってくるかわからない恐怖に迫られ、取り敢えず早く何かしたかった。
手に鋭い痛みが走る。
でも思ったよりガラスは薄くて簡単に割れたからよかった。
顔を痛みに歪めながらそう思った。
それより今は早くこの紐をどうにかしようと、手頃な破片を取った。
その時。
「なっ、なにやってるの?!」
飯塚さんが蒼白な顔をして叫んだ。
森さんも「きゃっ!」と悲鳴を上げた。
ガラスの割れる音に振り返ったらしい。
「これで紐を切ろうと思って。他に案が浮かばなかったから‥。」
痛みを隠し笑って言った。
やせ我慢、やせ我慢。
自分でやったし痛がってたらかっこ悪いからなんて、こんなときに自分は本当に見栄っ張りだなぁと内心苦笑い。
相変わらず2人は表情を固くしてこっちを凝視してたけど気にしてる暇はない、か。
手に取った破片で紐を切り始める。
上手く力は入らないけどなんとか切れそうだ。
力を入れるほど、手は切れて血が溢れる。
痛い‥っ
脂汗が出てきた。
呼吸が乱れる。
あぁ、やめとけばよかったかな。とか、なんでこんな事に。なんて痛みに泣きそうになりながら思った。
でもここまで来てやめるわけにはいかない。
歯を食いしばって痛みに耐え、続けた。
やった‥切れたぁ!
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