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一人で話をしたかった。
家主を追い出すわけにもいかないので、私はワンルームのアパートを出て、ドアの前で電話をかけた。
『はい? 春日さん? なんかトラブルですか?』
与謝君の声。プライベートで電話を掛けたのは初めてで、私は言葉に詰まった。
「あ……っと……あのさ……」
『はい?』
いつもと変わらぬ優しい声。ズキンとする心の痛みに、酔った勢いが背中を突いた。
「わ……私……与謝君が好き……なんだよね」
『……』
無言の相手を無視して言葉が溢れる。
「なんで……なんで私じゃなくって佐里菜なの?」
『……春日さん……彼氏さんいるじゃないですか……』
与謝君の言葉に、涙と感情が溢れる。
「彼氏より与謝君が好きなの!」
『……嬉しいですけど……俺……岡田さんと付き合う約束したから……』
「私の事嫌いなの?」
『そんな……春日さん……』
頭の奥底で、冷静な私が呆れている。まるで子供のわがままだ。
「嫌いじゃないならいいじゃない!」
『春日さん……順番めちゃくちゃですよ……』
困惑する彼の声。当たり前だ……こんな明け方近い時間に起こされ、めちゃくちゃな話に付き合わされてるのだから。
「私と佐里菜、どっちの方が好きなの?」
『……とにかく……俺は岡田さんと付き合うんで……ごめんなさい……』
「どっち?」
わがままな私の言葉に、ため息が聞こえた。
『……岡田さんです……』
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