クロ

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  昔、私の家の二軒隣に住んでいた真っ黒い犬こと【クロ】   私はクロが大好きで、小学校の給食で残したパンを持ち帰っては、クロにあげていた。   ある日、いつものようにクロにパンをあげ、可愛さのあまり撫でようとしたら...       噛まれた...   痛かった...     それでも私はクロが大好きで、門の隙間から鼻先だけ出すクロを撫で続けた。     しかし、クロの住む家の家族は、近所で悪い評判がたっていた。 『愛想がない』 『会っても挨拶をしない』   秋が終わろうとしている季節... 一家は引っ越して行った。   私が家に帰る途中、いつものようにクロの家の前を過ぎようとした時、誰も居ないはずの家から   「クゥゥン..クゥゥン..」   と鳴き声がした。   「クロ!?」 私は驚いた。   引っ越したはずの一家の家にクロだけが残され、門の隙間から鼻先だけを覗かせていたのだ。   まだ小学校低学年だった私は必死に考えた。   『何で?みんな引っ越したのに何でクロだけ置いて行ったの??』       数日後... クロの家は壊された。     家の跡形もないさら地に、首輪も繋がれていないクロの姿があった。     もうその時は、冬がすぐ側まで近付いていた。
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