クロ

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  とうとう雪が降り始めた。   下校途中、いつものようにクロに会いに行くと、クロは寒い中眠っていた。   そしてそのクロに、トタン屋根の切れ端と毛布が掛けられていた。 近所の誰かが見兼ねて置いてあげたのだろう。   私が近寄ると、クロは目を覚まし 「クゥゥン」と鳴いて私の手を舐めた。   『クロ...寂しいよね.. みんなどこ行ったんだろうね... クロはみんなを待ってるの?』   私の家で飼う事も出来ず、幼いながらも、何もできない自分が悔しかった事を覚えている。         そんな毎日を送っている時、とうとう新しい家が建ち始めた。     工事中、クロは土地の隅でその作業を見守っていた。     何日か経ったある日。   いつものようにクロに会いに行くと...               クロの姿が無かった。         私は、空き地や山の中、近所中を探し回った。   それでもクロの姿は見当たらなかった。               数ヶ月後....               家が完成した。
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