1163人が本棚に入れています
本棚に追加
机の上に開いたままで放ってある黒の携帯電話。
雪からメールばかり来ていた特別な携帯電話だ。
しかし、今はなんの反応のないただの携帯電話である。
興『……………』
興は体を布団でくるんでいる。
机『……なあ、興。元気だせよ。また前みたいに元気に怒鳴ってくれよ。』
電球『俺たちだって罪悪感は感じてるんだ。気ィ落とすなよ』
興は重い口をひらいた。
興『……なぁ、俺どうしたらいいのかなぁ?…』
本棚『興……』
本棚が励ましの言葉をかけようとした時、1匹の雀が窓をクチバシで叩いた。
雀2『大変だ! 興が好いてた女の子がさらわれた!』
机『何だって?!』
タンス『どういうことだべ?』
本1『さらわれた?』
本2『誰に?』
本3『雪ちゃんが!?』
雀2『ああ、本当だ! 情報屋の猫の原さんから聞いたんだ! 間違いねぇ!』
本棚『聞いたか! 興!』
興はうずくまったままだ。
ペン『おい、まさか興…ふられたからって雪ちゃんをほっとくきか?!』
興『…そんなわけないだろ!』
ベッドから飛び起きた興は玄関に向かった。
机『待て、興!』
興『なんだよ!』
電球『いつか言っただろう。もはやお前だけの問題じゃないんだよ』
ペン『俺たちが協力してやるよ!』
興『お前たち家具や文房具に何ができる!?』
ベッド『俺たちだけじゃない。この町みんなで協力するんだ!』
興『は?』
窓の外に目をやると興は言葉を失った。それも仕方ない。
何百、いや何千もの鳥などの小動物達が、興の家を取り囲んでいたのだ。
鳩1『全く、面白くなって来たぜ!』
雀3『まあ、興さんのためだしね』
烏2『今のお前はヘタレじゃねぇ。男だ』
電球『な? 行ってこい!』
ベッド『彼女を必ず救い出して下さい。神のご加護があらんことを。アーメン』
興『みんな…』
午前11時 曇り 日曜日。
興は決意を胸に秘め、玄関の扉を開けて雪救出へ向かったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!