覆い始める影

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血の気が引いていく私の顔を見て気分を良くしたのか、先生はクスッ、と小さく笑った。 「きっと写真を撮った人は教師か生徒どちらかが嫌いだったんでしょうね。興味がない、もしくは好意を抱いてる人の秘密なんて、そう簡単に暴露しないもの」 「何が言いたいんですか?」 「……自分で考えなさい。すぐに答えをもらおうなんて、これから先うまく世の中を渡っていけないわよ」 先生はもう一度手に持っている写真に目を落とし、私に背を向ける。 もう話すつもりはないらしい。 「落合先生?」 「あら、久保田先生」 タイミングが良いのか悪いのか、久保田先生が来たようだ。 落合先生は相変わらず余裕そうな笑みを浮かべたまま、軽く会釈する。 「職員室にいらっしゃらないと思ったら、こちらでしたか」 「ええ、生徒から預かっていた英語のノート、そちらに置いておきましたので返却お願いしますね」 落合先生の指差す先には、前回集められていたノートが重なって置いてあった。 「そうですか、わざわざすみません」 「では、私は職員室へ戻りますので」 コツン、コツン、とヒールの音が段々と遠ざかる。 その後ろ姿が消えるまで、私はずっと見つめていた。
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