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あの人に似た橙の髪は、面影を移して
笑う仕草、戦う背中
全てに彼を移した
「…どうせ、牛若の頃の影しか見てないだろ」
どんな時も鍛練を絶やさず、弱音や涙を見せない九郎が声を震わせて告げる
弁慶はそれを否定は出来なかった、牛若の影を見ていたのは確かだ
同一人物でもやはり、昔の彼を重ねて
だから、嫌われても罵られても仕方がない
「…答えないのは…そうなんだな」
「…否定は出来かねますね…」
そう告げると九郎はビクリと体を震わせるも顔をあげ、笑いながら“そうか”
その一言を残し、雪が降る外へ止める間もなく飛び出していった
今の時期、長く外にはいられない
気持ちが弱っている今、尚更だろう
弁慶は少し唇を噛みながら九郎を探しに外へと向かって行く
吹雪になって来ていたせいか前は見えない、だが目の前に白に映える橙の髪が倒れているのが見えた
「…九郎…」
「触る、なっ!」
涙を流し強気な瞳で弁慶を射抜く、グッと後ろに引きそうになるも相手を抱き寄せる
「…っ、お前なんて…「嫌いですか?」
九郎は、瞳で傷を見せた
苦しくて、痛いのだと
そんな彼を、今だろうが昔だろうが愛しているから
それならば愛し続けよう
昔も今も変わらないまま
END
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