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「桜、好きなの?」
彼女はもう一度俺に訊ねた。
「あ…うん。いや、普通かな?」
「どっちよ」
俺の返答に彼女は、ふわりと笑った。
とても綺麗な笑顔で。
「君は?桜、好きなの?」
「私?私は……好き、かな」
そう言って彼女はまた笑った。
今度は今にも消えてしまいそうな、悲しげな顔で。
しかし、その顔も一瞬で、すぐに元の表情に戻った。
「今日で退院なんでしょう?」
「なんで知ってるの!?」
「あれだけ大きな声で叫んでいたらね」
そう言って彼女は、クスクス笑った。
「聞かれてたんだ……ιでも、しばらくは週に一回来なくちゃダメなんだ」
「じゃあ、また会えるね」
『また会える』
そういえば、彼女の服装はパジャマみたいな服装だ。
ここに入院しているのだろうか……。
「ここに入院してるの?」
「うん。」
「そうなんだ!じゃあまた会えるね!」
何故か俺は、彼女とまた会えることを嬉しく思った。
それからしばらく俺たちは、他愛もない話をした。
しかしそれは、母さんからの電話で打ち切られた。
ピッ
「もう帰らなくちゃ…」
「そっか。気をつけてね」
「ありがとう。じゃあまた今度ね!」
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