灯1:気付く。

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私があの人に気付いたのはいつだっただろう。 よく覚えてないけれど、 物心ついた頃から気付いてた気がする。 あの人は、 並村灯は、 いつも近くにいた。 『あなたはだあれ?』 『私?私はねー灯。並村灯。』 『え、私も灯だよ。村崎灯。同じ名前だね。』 『そうね。』 あの頃は 私が明るい灯りで、 あの人が暗い灯りだった。 ……今とは逆に。 「村崎!村崎灯!」 「ほへ?」 「『ほへ?』じゃない!今は授業中だぞ。居眠りするな!」 そうだった。 あちゃー村竹先生はうるさいからな。 はぁ。 「先生。居眠りしてた訳じゃ……」 「どっちにしろ聞いてなければ同じだ。違うならP137の問九を解いてみろ。」 はぁ。 『並村さん。答え教えて。』 『少しは自分で考えなさい!』 『分からないんだもん。』 『はぁ……答えは6番よ。』 「6番です。」 私は自分で解いたかのような口ぶりで答えた。 「正解だ。」 同じクラスの他の生徒ークラスメイトともいう―達は早く授業を再開しろと言わんばかりに先生を見ている。 それに気付いた村竹先生は授業を再開した。 はぁ。 『並村さん。』 『なあに?』 『私とあなたは名前は同じ灯だけど、全然似てないね。』 冷たい私の『声』にあの人は、 『別に良いんじゃない?みんな同じような人間ばかりだったらつまんないじゃない。』 『そうかもね。でも、私はー』 《キーンコーンカーンコーン…》 チャイムが鳴った。 昼食の時間だ。 私のクラスはほとんど給食だ。 係の生徒が給食を運んで来る。 私は弁当。 レンジでチン♪の惣菜ではないし、 手作りでもない。 『村崎さん。学校でコンビニ弁当はやめなよ。』 『早死にするから?』 『だって毎食カップ麺かコンビニ弁当かレンジでチン♪のご飯と惣菜と……まともな食事してないじゃない!』 『だって作るの面倒臭いんだもん。それに料理したことないし。』 『だからって15の乙女がそんな生活で良い訳が……』 「私なんて……乙女なんかじゃないよ。体はそうでも……心は乙女じゃない。乙女じゃないよぉ……」 つい声に出してしまったけれど、 皆給食に夢中で気付かなかったらしい。 (良かった。聞かれてたら……。) 『声』にも声にも出さず、 そっと考えた。 自分を見る視線には気付かぬまま……
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