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しばらくして戻ってきた彼の手には、ピンク色の小さな飴玉が1つのっていた。
何でそんな物を持ってきたのか不思議に思っていると、彼は包み紙を開けて飴玉を口に放り込み、中でコロコロと転がし始めた。
私がその一部始終をじっと見ていると、不意に彼と目があった。
腕を捕まれたかと思うと、気づいたら彼の方に引き寄せられてキスをされていた。
口の中には、彼が舐めていた飴の甘い味が広がった。
「……っ……ふ」
彼の舌が、私の口を犯す。
お互いの舌が絡まる度に、痺れるような快感が身体中に走り、口の中は甘ったるさで一杯になる。
「……はっ……んん!」
苦しくなって彼の服を引っ張ると、すんなりと唇は離れた。
どちらのものともわからない銀色のイトが、名残惜しそうにひいた。
「どう?これならキスだろ?」
肩で息をする私に意地悪く微笑んだ彼は、とても満足そう。
確かに口の中はものすごく甘い。
いつの間にか彼が舐めていたはずの飴玉が、私の口に移動していた。
「……バカ」
恥ずかしくなってボソボソと呟いた私の言葉が聞こえたのかはわからない。
けれど、彼はすごく上機嫌でまた本を読み始めた。
むぅ……と一言唸った私は、飴玉を舐めてみた。
コロコロと舌の上で転がるこれは、より一層私に彼とのキスを実感させる。
甘くても、甘くなくても、
彼とのキスはいつでも本物なのだと。
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