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カラン コロン カラン コロン
静かな夜に響く、心地よい下駄の音。
少し前を歩く彼女は、手を後ろに組みながら機嫌よく進んでいる。
カラン コロン カラン コロン──
どこに向かっているのか、僕にはわからない。
僕も聞かないし、彼女も言わない。
もしかしたら、行き先なんて決まってないのかもしれない。
……ふと、彼女の足が止まった。
「手、繋ぎたいな」
振り向きながら彼女は言った。
僕は微笑みながら、手を差し出す。
「僕も繋ぎたかったよ」
暖かい手を優しく握って、二人でまた歩きだした。
「どこに行くか決まってるの?」
「……決まってない」
やっぱりね。でも良いんだ。
僕にとって重要なのは、どこに行くかじゃなくて、誰と行くかだから。
「とりあえず、あのお月様を目指して歩こうかな」
彼女は空高く昇った満月を指差した。
「決まったね。じゃぁ行こう」
黒い影が二つ、満月に向かって歩きだす。
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