第一章 追われる者

9/13
前へ
/88ページ
次へ
「貫け、制裁の稲妻……エルサンダー!」 「受けろ、浄罪の焔……エルファイヤー!」 アベルとワグナが同時に魔法を放った。雷と炎が二人の間で激突し、爆発を起こす。 爆風によって起こった砂埃で視界が遮られたが、その間にアベルは2撃目の詠唱を唱え始めていた。 「もう一発、エルサンダー!」 アベルが放った雷が、煙を貫いてワグナに突っ込んでいく。 しかし、視界が悪かったせいで狙いが疎かになっていた。ワグナは体を反らし、ギリギリのところでアベルの魔法を躱した。 「エルファイヤー!」 視界が開けたところでワグナが炎を放つ。 確実に直撃コースだ。 「マズい、サンダー!」 直撃する前に詠唱の短い下級魔法で、炎を迎撃する。アベルに当たる直前に炎を破裂させたが、爆風で吹っ飛ばされた。 「まだだ、エルファイヤー!」 「!!」 アベルに追い打ちをかけるように魔法をたたき込む。 大きな火球がアベルに襲い掛かる。躱そうと地を蹴ってその場から離れたが、間に合わず炎が背中に当たった。 「ぐぁっ!」 火球が爆発し、アベルの周囲に緋色の炎が四散した。 「クク…勝負あったな」 倒れるアベルを見てワグナは笑みを浮かべた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加