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ホテルから出て布施の車に乗った
携帯を取り出して誰かに電話をしている。
「俺だ」
「ご苦労様です!」と威勢のいい声が携帯から聞こえた。
「女を引っ越しさせる。明日の夕方までに部屋を用意しろ。家財道具一式も揃えておけ」
それだけ言うと電話を切った。
私の視線に気付いた布施は「どうした?心配しなくても全部こっちで準備するから」と優しく私に言った。
「私でいいんですか?」思わず口から出た言葉だった。
きっと布施はかなりの大物だ。
それなりの女もいるはず。
こんな私でいいんだろうかと不安になった。
「お前は何も心配する事はない。組には関わらせない。危ない目にも合わせない。ただ俺が会いたい時に会うだけでいい。それ以外は行き先さえ連絡しておけば自由にしていい。生活の心配はするな。」
夢じゃないんだと改めて実感した。
「明日の夜、うちの若いやつに迎えに行かせるから荷物だけまとめておけ。今日はゆっくり寝ろ」
私は頷いて車から降りた。
興奮して眠れそうにない。
クローゼットから洋服を出してバックに詰めた。
明日からどんな生活になるんだろう
期待と不安が入り混じっていた。
「あの人にふさわしい女になりたい」そう思い始めていた。初めてセックスした事よりも違う興奮だった。
明日から住む部屋…どんな所なんだろう
そんな事を考えているうちにいつの間にか眠っていた。
携帯の音で目が覚めた。
布施からだ!
慌てて電話に出ると「亜紀か…急用ができて2~3日留守にする。お前の事は若い衆にまかせてある。6時に迎えが行くから用意しておけ」「わかりました…あの…色々ありがとうございます。気をつけて行ってきて下さい。」
布施は笑いながら「帰ってきたら会いに行く」と言って電話を切った。
良かった…夢じゃなかった!
安心してまた眠りについた。
6時ちょっと前にインターホンが鳴った。
ドアを開けるといかにもヤクザっぽい20代前半の男が2人立っていた。
「失礼します」と部屋に入り「姐さん 荷物はこちらですか」と声をかけられた。
「はい…あの…たぶん私の方が年下だから亜紀って呼んで下さい」
「いえ!親父に怒られますから!車は下に着いてます。準備はよろしいですか?」
車がゆっくり走り出した。
20分ほど走った所で「そろそろ着きます」と声をかけられた。
想像より遥かに立派なマンションだった。
家賃いくらなんだろう…とつい現実的な事を私は考えていた。
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