0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
彼女はギターを弾いていた。
ピンクの淡い爪先。白いピックが映える細い指。
時折長い髪をかきあげて、あの綺麗な指先はアコースティックギターをかき鳴らしていた。
彼女はギターを弾いていた。
~彼女とアタシ~
水色の淡いカーテンが出窓に揺れる小さな喫茶店。
たった今この場で、好きでもなかった彼氏に振られたアタシはメンソールの煙草をふかしながらカーテンが優しい風に揺れるのをただ見ていた。
カーテンを透かして向こう側の蒼と白が、眩しいくらいに目に刺さる。
短くなった煙草を黄色い灰皿に押し付けてオレンジジュースをストローでカラカラと混ぜる。
透明な氷が光の反射を受けて、中でクルクル。ブリリアントなソレはまるで宝石みたいに、グラスの中で踊ってる。
「めんどくさい…」
昔から。
恋とか愛とかわかんないんだ。
人を好きになるって、どんなかんじなんだかわかんない。
好きなバンドがあっても別にその人達が好きなわけじゃないし。
勿論友達や家族は好きだけれど、恋愛なんてもってのほかで。
アタシの世界は井の中の蛙。狭い狭い箱庭がお気に入り。
大海に出ようなんて思わないわけで。
最初のコメントを投稿しよう!