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子供の時に、よく兄貴とやった遊びがあった。
影送り……やり方は、簡単、雲1つない青空の日に外に出て自分の影を地面に写し、その影を瞬きせずに見つめながら10秒数える。
数え終わり、空を見ると青空に自分の影が写る、といった変わった遊びだ。
俺と兄貴は 青空の日のたびに その遊びをした…そんな懐かしい記憶が脳裏を巡った…。
「ここは……?」
少年は周囲を見渡した。天井が高く、周囲には背の高い本棚が立ち並び、どの本棚にもギッシリと本が並べられている。
小さな図書館みたいな雰囲気だ。部屋のあちこちには、観葉植物が置かれており、その空間は不思議と落ち着いた空気が漂っている。
少年は、その部屋の中央にある椅子に座っており、正面には知らない人物がテーブルを隔てて座ってこちらを見ていた。
目の前の人物……白髪に、赤い目という変わった風貌をしているが、よく見るとまだ若い、年は20代後半ぐらいだろうか…?。
その青年は、ただ黙ったまま煙草を燻らせながら少年を見ている。
「あ、あの…」
沈黙に耐えきれなかったのか少年が口を開いた時だった。
「魎月さん!!」
背後から人の声がする、ふり返ると小柄な少年が手にティーカップを乗せた盆を持ち、こちらに向かって歩いてきた。
現れた少年は まだ幼さが残る顔立ちにクセのある茶髪をしており、年齢は14、5歳ぐらいに見える。
「お客さんの前で煙草は失礼だよ!」
諌める様な口調で青年に言った 言われた本人は不機嫌そうな顔をしながら煙草を灰皿に捨てる。
「すみません。はい、お茶です」
茶髪少年は 笑顔でティーカップを渡してくれた。
「どうも……って、あのっ!!」
茶髪少年の出現で少年の言葉は中断された為、ここが何処かを聞きそびれる処だった。
「此処、何処だよ!!」
「落ち着け。鳴海四季くん」
青年が初めて口を開いた。
「な!!」
四季は驚いた表情で、目の前にいる赤目の青年を見た。青年は僅かに笑いながら四季の様子を眺めている。
「何で知ってるかって顔だな」
そう言い、青年は 四季を指差した。
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