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「首から下げている通行書に、四季くんの名前があるからさ」
青年の台詞を聞いて四季は、首から下げている通行書を見た。
それは、ハガキより一回り小さくて、そこには〝 通行許可書 鳴海四季〟と書いてあった。
「なるほど……で、お兄さんは誰?」
四季は、不審そうな顔をして青年に尋ねた。
「挨拶がまだだったな。俺は、魎月……この雨月書庫の主だ」
そして……といい、魎月は少し離れた場所に座る茶髪少年を指差した。
「あっちは望月。俺の助手だ」
「初めまして!鳴海四季くん」
望月は、四季に軽く頭を下げた。
四季も、軽く会釈を返す。
(自己紹介もいいけど、もっと色々聞きたい事があるんだが)
そんな事を四季は ボンヤリと思った。
「ま、色々と聞きたそうだが、慌てんな。ちゃんと説明するから」
魎月は再び煙草に火をつけながら言う。
「も~!魎月さん、ダメだったら!!」
望月が 再び諌めた。
「いいよ、俺ん家も父さんがよく煙草吸ってたから」
多分、煙草がないと落ち着かないのだろう、別に気にならないし、もう話が中断されたりするのは ゴメンだった。
魎月は悪いな、とだけ言い煙草を吸った。四季は、もっとも重要な事を口にした。
「あのさ……俺…死んだハズだよな?」
「あぁ…そうだ…」
間を置かず魎月は答えた。
四季は 先日、事故により命を落としたのだ。
それが、ここに来る前の最期の記憶だった。
「……で、死んだ俺が何で此処に?まさか此処が天国とか言わない?」
小さい時に祖父から聞いた話だと天国は、花畑がある綺麗な所と聞いたが、此処は、花畑が無く、本棚があるだけだ。
「言わん。言っとくが…地獄でもないからな、だから安心しろ」
魎月は、煙草の煙をゆっくりと吐き出す。
「…少なくとも、魎月が天使や悪魔じゃないのは分かったよ」
何となく気が抜けた声で言い、四季は、望月が淹れてくれたお茶を飲んだ。
「で……此処が何処だがの話になるんだが」
魎月は、吸っていた煙草を灰皿に置いた。
「ここは、あの世でも四季が暮らしていた所でもない」
「どういう事さ?分かりにくいんだけど…」
「魎月さん、分かりやすく説明しないと、四季くん困ってるよ?」
望月がそんな事を言うと、魎月は、暫く考え込む。
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