第一話 「影送り」

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「そうだな。狭間と言うべきだろうな。この雨月書庫は、あの世とこの世の狭間に存在していてな」 「狭間かぁ。ん~マラソンに例えたら中間地点みたいなものとか?」 「そう考えてくれても構わねぇな」 魎月は、煙草をもう一度だけ吸うと灰皿に置いた。 「でも、四季くん、結構冷静なんだね~普通は、こんな話聞かされたら混乱するか取り乱すのにさ」 望月が感心したような口調で四季に語りかけた。 「そうかな?最初は疑ったりしたんだけどな。けど、取り乱したりした処で俺が死んだ事には変わりないから……」 そう言った四季を魎月は、無言で眺めていた。 「……で、大抵の人間は、死んだ後、あの世へ旅立つんだが中には例外も居てな…」 「例外?」 「この雨月書庫は、その例外を抱えたヤツのみが訪れる事が出来る場所なんだ」 「それって、俺も?」 魎月がその言葉に頷く。 「この場所はな、強い心残りがあるヤツが訪れるんだよ」 「心残り?」 「誰でも死して心残りってモンはあるんだが……最も強い心残りを持ったヤツが此処に導かれやすい」 四季は、ゆっくりと考えたまだ死にたくなかったし、家族や友人とも居たかった……やりたい事もあったのにな……そんな事を考えた。 「で、訪れた客の心残りを聞くのが、俺らの役割なんだよ」
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