『心残り』

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四季が魎月の台詞を理解するまで数十分は掛かった。 「四季、お前にも必ずあるハズだ」 「そうは言っても、ありすぎて分からないよ!」 心残りと言っても、やりたい事やらがありすぎて直ぐにはピンと来ない。 まさか、自分が死ぬなんて夢にも思っていないから。 部屋に暫くの間、沈黙が漂った。 四季は、必死に思い当たる心残りとやらを考えているらしくブツブツと言いながら部屋の中を行ったり来たりしている。 「何でもいい、って訳じゃないからな、お前の心に深く残る位……大切な事が必ずある」 魎月は 必死で考えている四季を眺めながら話している。 「う~ん」 死んだ後でさえ気にかかる程の心残り……頭の中で様々な事が巡っていく中、一瞬、鮮明に浮かんだ事があった。 眼鏡を掛けた青年の姿が脳裏に浮かび上がる。 「…兄貴?」 四季の脳裏に浮かんだのは自分の兄だった。 「兄が居たのか」 「うん。10歳違いで冬季って名前なんだ」 四季より10歳上の兄は、四季が家族の中でも一番気が合った人物だった。 「兄貴……」 「どうやら、心残りが見つかったみたいだな」 魎月の言葉に四季は黙って頷いた。 「よし……じゃあ、聞かせてもらえるか?」 四季は頷き、再び椅子に座ると、兄の事を語り始める。
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