『心残り』

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四季の両親は、共働きだった為、冬季と二人で過ごす時が多かったらしい。 優しく、しっかり者の冬季は、幼い四季の面倒をよく見てくれたらしく、その為、二人は成長してからも仲が良かった。 「へーそりゃまた珍しいな」 「だろ?ま~喧嘩もしたけどそれも含めて楽しい思い出だよ」 兄の事を語る四季は、本当に嬉しそうだ。 それほど兄を信頼している証拠だろう。 「影送りって遊びはさ、小さい頃に兄貴が好きだった本に出てきた兄妹がやってた遊びだったらしいんだ」 まだ幼い四季に兄は嬉しそうにこう言ったらしい。 『その本に出てきた兄妹が楽しそうに空に自分たちの影を送っている絵がとても印象的だったんだ。僕にも弟か妹が出来たら一緒にやりたいってずっと思ってたんだ』 今でも、その台詞はよく覚えている。 「…生きてた時は兄貴が俺の面倒みたりするのが当たり前に思ってた。一番世話になったのに…」 四季は、寂しげに呟いた。 「なのに、有難うも、さよならさえ言えないまま死んだから……まったく俺ってバカだよ、死んでから気が付くなんて。めでたいヤツだよな!俺って」 四季は皮肉そうな顔をして自分を責める様に言った。 「けどな、四季、兄貴に世話になったのに気付けたんだろ?なら色々と兄貴から貰った思い出を大切にしろ。そして、決して忘れるな……今の気持ちも含めてな」 魎月は、静かな口調で四季にそう言い聞かせた。 「…分かった」 顔を上げた四季は寂しげだが僅かに笑顔を浮かべた。 そのやり取りを望月も、優しく笑いながら見守っている。 「そうと決まれば……行くぞ、四季」 魎月は、立ち上がり四季の腕を引っ張りながら部屋にある大きな扉に向かい歩いて行く。 「へ?行くって、何処に?つか、引っ張らなくても歩けるから!」 四季は魎月の手を振りほどき、目の前の扉を見た。 細長く、中央にステンドグラスが嵌め込まれた扉だ。
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