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次の日も その次の日も そのまた次の日も
暇さえあれば、私はひろゆきの自転車屋さんへ行っていた。
もちろん口実に自転車のパンクを遣ったりなんかしてない。
それでも ひろゆきは、私と話をしてくれる。
一緒に笑ってくれる、一緒に考えてあげる、一緒に空を見上げる。
たくさんの一緒の時間を過ごす―。
そんな中で私は、とても嬉しいことを発見した。
ひろゆきと同じ学校だということ。
今まで気づかなかった自分が馬鹿みたい。だって、隣のクラスだよ?
私は1組で、ひろゆきは2組…
高校生になったばかりだからかな…
私は どうも人の名前を覚えるのが苦手らしい。
クラスの人の名前だって、フルネームで言えって言われたら、入学から半年近く経った今でも、絶対に全員の名前を言えない。顔だって同じ。
だから私、歴史が苦手なのかも…。
『じゃあさ、学校で見かけたら声かけてよ?』
「おうっ 美鈴もな!!」
『うんっ あ、ていうかアドレス教えて?』
「アドレス?」
『そう!』
「俺 携帯とかパソコン持ってないんだよね…」
『え?そうなの!?』
「うん」
『買う予定とかもないの!?』
「うん、うち結構苦しいんだよね、家計がさ…」
『そっかあ…でもいいや!!』
「なんで?」
『だってメールなんかよりさ、会って話した方が楽しいし!!会いたくなったらここに来るし!!』
「だよな笑 だってここに来るの もう日課になってんじゃん!!」
『ね!! あ、私そろそろ帰るね!!明日、声かけてよっ』
「おう」
いつも思うけど、家まで送ってくれてもいいよなぁ…
結構すぐ振り返ったら、もう いなくなってるし…
でも、嬉しかった。
私がひろゆきの家の自転車屋さんに行ってることが、私にとっても、ひろゆきにとっても、当たり前になっていっているから。
【恋】
ふと頭に浮かんだ言葉を私は振り払った。
恋がどんなものなのか経験のない私には、分からなかったから…
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