一章

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 「ほれ、啓介のお許しが出なかったからお前はジュース」  啓介がこうなるだろうと予めから注文しといたジュースを鈴に手渡した。  「ビールは苦いから苦手だし、ジュースの方が美味しいもん」  なら初めから欲しいなんて言うなよな。  「じゃ、主役のフラれ話を聞こうか」  俺も明も大分飲んで顔が赤くなりだしたぐらいのときに明が遂に切り出してきた。  「いえーい、まってました」  何故か飲んでない鈴が1番ハイだ。  いや、いつもテンションは高いがな。  「だいたい、想像はつくがな」  明が呆れ顔で言った。  俺のフラれる理由は大概一緒だ。  「はぁ、今回も見捨てれない状況だったんだ。デート中に道の端でうずくまってる妊婦さん見付けちまって、病院が近かったし連れていってやったんだ。それだけで終わる筈だったんだが、病院でその人の旦那さんと間違えられて一緒に居てあげてね、なんて言われてさ。本当にその妊婦さんも辛そうでそのまま置いて行くことがどうしても出来なかったんだ」  ほっときゃあ良いものもほっとけない。  だって、そうだろ?
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