一章

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 「それじゃあ、気をつけて」  このままだと俺まで遅刻してしまう。  「ああ待って下さい。お金返さないといけないしちゃんとお礼もしたいので連絡先教えて下さい」  う、ここで繋がりを持つと同じことを繰り返す気がする。  「ああ、構いませんよ。別に」  今度こそ素早く立ち去ろうとしたが腕をがっしり掴まれて前に進めない。  振り払えず、仕方なく向き合う。  ここで初めてしっかりとお嬢様の容姿を確認した。  髪は色素が薄く茶髪で綺麗なストレートが二の腕の真ん中ぐらいまで伸びてる。  薄く化粧がされていてぱっちりと開いた瞳と小さくぷっくらとした紅い唇は男の純情を揺さぶる程愛らしい。  5月も終わり暖かくなりつつある季節の中、肌の露出は最低限でアクセサリーも目立つものは身につけてはいない。  けれど、お嬢様らしくバックは高級ブランド品のようだ。学校に行くにしては些か大きすぎるような気がするが。  「お礼をさせてください。何もしないなんて無礼なことは出来ません」  おっとりとした風貌とは異なりなかなか我が強い。  見返りは受けないと決めたばかりだが此処で無理に断るのも無礼ではないか?
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