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満月の夜に2つの影が数あるビルの一つに降り立った。
一つは年期を感じさせる男だった。
闇に溶けるようなマントをはためかせながら、男は後から来た青年を静かに眺めていた。
もう一つの影は、レインコートを纏った顔立ちの良い青年だった。
「いい加減諦めてくれません?」
青年の言葉に、男は広がったマントを引き寄せて体を覆うと
「今宵のような良き月夜に、そんな無粋な事はよしましょう」
そう言いながら、マント男は口を歪める。
その口の端からは、長い犬歯が見えた。
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