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江戸時代―
そして、ここは老舗のお団子屋。
ここに一人の侍がいた…。
「おばちゃーんっ!お団子~!!」
『はいよ。いつにも増して、食べるねぇ…』
「そうかなぁー?あはは~」
笑顔で茶団子を頬張っているこの青年。
名を「白鴎 つばめ」と言う。
腰に差した一本の刀。
侍とはかけ離れた緩~い着物。
黒髪のハネが特徴的で、健康そうな肌色が太陽に照らされていた。
「ん~…平和だねぇ…」
こないだの「辻斬り」事件から数日後。
特に、大きな事件はなくすこぶる平和。
小鳥が鳴き、照らされる光は眩しくて暖かい。
「桜がもうじき、咲くね~おばちゃん!」
『そうだね。』
促され、団子屋の女将は傍の桜の木を見つめた。
つばめの言う通り、薄ピンク色した桜の蕾が綻びかけている。
『女将さん、お団子はまだかい?』
『はいはい。そんなに急かさないでおくれ。』
お客の言葉に、女将は団子が入った包みを渡した。
『ありがとうございました。』
包みを持ったお客はこれから故郷に帰るのか、大きな荷物を持っていた。
服装からしてお金持ちそうだ。
「おばちゃんの団子はやっぱり、人気だねぇ…」
『そうかい?あの人はね、江戸に来たら必ずここに寄っていくんだよ。』
「ふーん…」
団子を頬張り、その背中を見送る。
と…
少し離れた所から、侍が数人、その人に寄ってきた。
ガラの悪そうな侍。
その人の慌てようから、知り合いじゃない事は確かだった。
『おやまぁ…盗賊じゃないかい?』
つばめがじっと見ていた方に目線を写した女将さんは青ざめる。
「助けるのが、侍だよねー?…おばちゃん、お団子、作っといてねっ☆」
『あいよ』
その女将の返事にニヤリと笑うと、つばめは男達に近づいていった。
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