勝利のために

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ズバンッ! 瀬能の指先から放たれた球は内角に構えられた間宮のミットに一分の狂いもなくおさまる。 「ストライクッ!」 審判のコールを聞きながら打席に立つバルガスは瀬能に視線を向ける。 (ほぉ…) その視線を真っすぐに受け止めた瀬能は間宮からの返球を受け取ると、テンポ良く投球動作に入って続く球を投じる。 初球と全く同じ内角に構えられた間宮のミットに吸い込まれるような軌道で放たれた直球にバルガスのバットが動く。 ブンッ! ズバンッ! 「ストライクッ!」 バルガスのバットが空を切る。 『おぉぉっ!』 滅多に見れないバルガスの空振りに観客席が声を上げる中、バルガスは一度打席を外してタイミングを計るようにバットを振る。 (速くなったとは聞いたが…これほどか…) バルガスはもう一度視線を瀬能に移すと自分が抱いていた昨年までの瀬能の姿を頭から消し去った上で打席に入る。 バルガスの視線が変わったことを感じながら瀬能は頷くとセットポジションから三球目を投じる。
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