最愛の人

2/4
前へ
/10ページ
次へ
「……真!夢真!」 身体を揺すられ、俺は夢と現実をさ迷っていた。 「夢真!!いい加減に起きろ!授業は終わってんだぞ!」 なかなか起きない俺に痺れを切らしたのか、本格的に俺を揺すり始めた。 「……起きるから、そんなに揺するなよ。亮介」 俺はまだ眠たい目を擦りながら、身体を起こした。 亮介はこの大学で知り合った友達だ。 ………友達。 俺の中で、亮介の存在はもう友達以上になっている。 俺はいわゆる同性愛者というやつだ。 女の子に興味がなかったわけではないけど、好きになるのはいつも同性だった。 そのこともあって、俺は地元の大学ではなく、遠く離れたこの大学に入学した。 自分の気持ちを伝える気は始めからなかった……。でも、最近、恭介への想いがどんどん強くなる。そろそろ自分の気持ちを抑えているのも限界を感じる。 「今日はどこに行く?」 恭介は俺の複雑な想いに気が付くこともなく、いつもの変わらない笑顔を俺に向けてくれる。 「そうだな……」 それはいつもの日常と変わらずに過ぎていく。 あの日までは…。 久しぶりに俺は亮介と飲みに行き、終電を逃した亮介は俺の部屋泊まることになった。 途中のコンビニで酒やつまみを買って、俺の部屋で二次会が始まった。 「夢真…お前、好きな奴とかいないわけ?夢真ってあんまり浮いた話ってないよな……」 「いるよ……。俺、恭介が好きなんだ……」 酒の勢いもあって、俺はつい、自分の気持ちを伝えてしまった。 「……えっ!?」 一瞬、時が止まる。 一度溢れてしまった想いはもう止めることはできなかった。 「俺は亮介が好きだ……」 その後、亮介は何も喋らずに黙々と自分に注がれた酒を飲んでいた。 俺は亮介のその反応見て、もう亮介の関係が終わってしまうことを実感していた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加