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葬式が終わり、静かになった薄暗くなったこの場所で俺は佇んでいた。
恭介がこの世からいなくなったことを目の前で見せつけられ、綺麗だった顔や身体には目を覆いたくなるようなキズが生前の姿とは思えない状態で、恭介は棺桶のなかで眠っていた。
葬儀が終わり、明日には恭介は焼かれてしまう。
俺は葬式に出れなかった。
現実を受け止めるにはあまりにも辛すぎた。でも、焼かれてしまう前にどうしても会っておかなきゃいけないと思った。会わなければ、一生後悔するような気がした。
「恭介…恭介……なんで、お前が死ななきゃならなかったんだよ…。恭介……」
俺は恭介が寝かされている棺桶にしがみつくように我を忘れて、泣いていた。
どのくらい泣いていただろうか、ガタンという音が響いた。
「だれ?」
この薄暗さではどこに誰がいるのか分からなかった。
不意に俺は腕を捕まれ、息もできないほど強く抱き締められた。
「ちょっと…離して」
突然のことに驚いたが、嫌な予感がして俺はもがいた。
俺の目が大きな手で覆われた。そして…
「んっ……」
キスをされた。
最初は唇を押し付けられているだけだったが、抵抗できないでいるとその人の舌が俺の口腔内に入ってくる。
「やぁ……っ…」
何だかわからないけど、涙が溢れてきて、力が抜けてしまい、その人に寄りかかるようになってしまう。
「泣いたって死んだ奴は戻って来ないんだぜ」
そいつは俺の耳元でそう囁いて、俺を突き放し、そのまま何事もなかったように去っていった。
支えを失った俺はそのままは恭介の眠る棺桶の前に座り込むしかなかった。
「恭介……俺はどうしたらいいのかな?」
俺は呆然と俺は呟いた。
この場にいつまでもいることができないと思い、俺はヨロヨロと立ち上がり、その場を後にした。
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