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その日のバイトはしっかりやれたのか分からなかった。
気が付いたら、俺は海岸に来ていた。
まだ肌寒い季節のため、海岸には誰もいない。
俺はどうしたらいい?
せっかく、亮介のことを思い出すことが辛いから、こんな見知らぬ地まで逃げてきたのに…。
逃げてきた……。
逃げて……。
そうだ、俺は逃げて来たんだ。
亮介のことをあんなに愛していたのに、自分が責められるのが嫌で……
俺はどこまで自分勝手なんだろう。
亮介は俺が逃げることを許さないのだろうか?
でも、お前のいないこの世界に俺は必要なのだろうか?
俺はもう何も考えたくなかった。
時化のため、目の前の海が大暴れしていた。
このまま海に入れば、俺を波が拐って行ってくれるだろう。
俺の存在も身体も何もかも消してくれるかもしれない。
俺を探すような存在はいない。
このまま流されてしまうのがいいのかもしれない。
俺は一歩一歩、海岸の柔らかい土を踏みしめながら、荒れた海に向かって歩き始めた。
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