終われども、傲慢

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終われども、傲慢

    慣れないヒールの踵で 都会の夜の底辺で綱渡りをしているのですが   安全地帯を選んでも 泥濘に足を捕られ 逃げ出す事は叶いません   此の街は     北からの生易しい風が あたしの終わりを告げる 訃報(シラセ)を運んだと聞くが 此の耳には一向届きません 今日も見知らぬ方に跪きます そんな一日は何一つ変わりません   求めた言葉なんて何一つ 落とされやしない 此の 女の飾り窓では   あたしを慮って呉れる 吐息と愛撫に餓えている あたしの肌は 現在 病んでく     飾り立てた夢で腐敗した 現実を架空の世界に摩り替えて 電話越しに無償の愛を強請る 懐古の夏 蝉時雨に濡れた純粋の笑顔を きっと今もう感じられない 同じ場所には二度と立てない     泥の中で下から伸ばされた手を踏みにじって あたしはどうにか生きていけるが     荒みゆく夢の末期がどんなに 美しくないとしたって 人生は終わらないのです   現実 あたしに触れる手は 全くあたしを覚えてくれない人達のものです   慣れない爪先立の悲鳴にすがっている あたしは死んでしまいそうだ     眠った横顔が可愛らしいのだと 子供のように儚いと謳って 優しくなぞったラインはもう その手に毒されている それさえ、も
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