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魚遊戯
最後の夏の始まりに咲いた金魚鉢
ぐるりとめぐって
此の夏の始まりに裂いたは同じ物
からん ころん
豪奢な金魚鉢を引っくり返したら
中身はからっぽ
渇いた酸素に悶える金魚は
真っ赤な飽毒の肺を満たして
がしゃん がしゃん
土の合間を泳ぐ金魚は
誰が為に呼吸をするのか
彼の鐘が鳴るのと同じようにだよ、と
触れた手は穢汚の温床
渇いた儘たおやかにくるむのは優しく首を絞めたいから
水と空気が無い
呼吸も無い
だが生命は有る
意思も有る
真っ赤な金魚が真っ赤な肺に消える
泣き喚きながら硝子の破片を泳いで消える
雨のない陸の上をふらふらと
生まれる痛みを伴う行為に縋っていた
からっぽの金魚鉢が溢れていく
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