禅と奇蹄との押し問答

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禅と奇蹄との押し問答

きっきょう きっきょう     それでも未だに 死を思ひ立つ事はないのか乎     きっきょう きっきょう     惨めよねぇ 哀れよねぇ   死ぬる気概も御ざらむしゃん   組子の苦味(くみ)にも 耐へられむと 己の語釈もままならむと   衆愚を腹に飼ゐ馴らすのみ   やあで はてさて 此は如何にも   こっけい こっけい     然して此の 跫音高らか 脇目も振らず 一目散に退散するわ   これや そこいく 奇蹄類や   疾風の如くに駆けて逝く   これや そこ逝く 奇蹄類や   逃げは出来ぬぞ     邪恋の末路や 驟雨のほとりに 終宵 獣行共寝む   目覚めてや なほ 明くる事ぞなき 我が恋か         逃げたのは果たして禅か奇蹄類か
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